会社で収益不動産を購入したり、不動産投資(賃貸業)を行う際に、建物の減価償却が付いて回ります。
不動産の減価償却の効果としては「納税の繰り延べ」がよく言われます。
ここでは加えて、「実質無利息の融資期間」という考え方についてです。
ざっくりとした内容となりますが、書いていきます。
◆不動産建物の減価償却
不動産を購入すると建物を年々減価償却していくこととなります(※土地は無し)。
例えば、木造の法定耐用年数は22年ですが、22年以上経過した築年数の古い木造の建物を4,000万円で購入した場合、4年間毎年1,000万円を減価償却費として経費計上していくことができます(便宜上、建物のみで考えています)。
そのため、一般法人などでは節税目的という点で、不動産を購入したりします。
昨今流行熱の高まっている不動産投資もまたしかりです。
ざっくりとした考え方ですが、4,000万円で購入した建物で、賃貸収入が毎年400万円あれば本来利益である400万円に対して税金が発生しますが、減価償却で1,000万円の経費が計上されるため、収支はマイナス600万円となり税金の支払いがなくなります。
これが今回の例の築古木造の場合は4年間続きます。
◆減価償却で納税の繰り延べ
今回の例では、4年間毎年マイナス600万円の収支となり、この期間に支払う税金は0円です。
ですが、1年目に1,000万円の減価償却を計上すると、所有不動産の価格(簿価)が毎年1,000万円下がっていきます。
1年経過後は3,000万円の簿価となります。
4年たつと0円になりますが、簿価としては1円となります。
5年目以降は1円の簿価の建物を所有していることになり、減価償却も計上できなくなります。
そのため家賃収入の400万円に対して、税金の支払いが必要になってきます。
この減価償却期間が切れたときに、物件を売却するという選択があります。
その際には1円の建物を売るという税務上の計算となり、仮に同じ価格の4,000万円で売却した場合は、3,999万円の利益が出るということになります。
その利益3,999万円に対して税金の支払いが発生します(税率は個人・法人で異なります)。
この点が、「減価償却は税金支払いの繰り延べ」といわれる所以です。
ざっくり言ってしまえば、不動産所有期間に減価償却で節税できた分は、減価償却期間が切れたり売却した際に反動で納税として跳ね返ってくる構造となります。
投資の指標で現在の100万円は将来得る100万円よりも価値が高いというものがあります。
そのため、減価償却期間が切れる時期に、新たに減価償却が計上できる物件を買い増していくという方法もよく紹介されています。
◆減価償却期間は実質無利息融資の借入期間
以前、ある不動産投資関連の本にこんな趣旨の内容が書いてあったのを覚えています、
「減価償却期間中は実質無利息融資を受けているのと同じようなもの」といったような内容です。
読んだときに「こういった考え方もあるんだな」と感じたのを覚えています。
先ほどの例に戻すと、4年間かけて4,000万円の減価償却が計上され、その間の税金は繰り延べしている状態。
その繰り延べしている税金分は「実質無利息融資」と言い換えられるということです。
コロナ禍でも「実質無利息期間〇〇年」という事業性の金融緩和融資が政府より行われ、多くの企業が先の見えない経済状況の中で利用しました。
弊社でも利用させて頂きました。
通常、企業の運転資金のための事業融資には当然利息が付いて回ります。
この俗に言うコロナ融資のような実質無利息融資を、不動産購入の減価償却期間に作り出しているという考え方です。
実際に様々な要因が絡まる不動産投資や実業の中で、不動産の減価償却を含めタックスコントロールしていくには会計士・税理士のような専門家の力を借りなければなりません。
ですが、会社経営者やこれから不動産投資(賃貸業)を考えている方は、このあたりの基礎的な内容を頭に入れておいて損はないと思います。