漫画「正直不動産15巻」を改めて読みました。
今回もそれぞれの章のテーマについて不動産会社目線で触れていこうと思います。
◆更新料(後編)
前回の続きからはじまります。
賃貸借契約を更新料ありで締結し、かつ入居者(借主さん)が更新する旨を伝え、すでに更新料を払っている状況。
そこで入居者都合で、支払済みの更新料を返してもらえるのかというところが論点となっています。
結論としては、契約ごとなので返金は難しいというのが現実です。
法外な更新料でなければ、過去の判例でも支払う必要があるという結果となっています。
更新料はエリアによって商習慣としてない場合があったりもしますが、東京では新賃料の1か月となっているのが一般的です。
◆価格交渉
高く売りたい売主(売る人)さんと安く買いたい買主(買う人)さんの話です。
不動産会社で働いていると売買契約へと向かう途中で、買主さんの価格交渉に関わることが当然あります。
買主さんとしては、できるだけ安く買いたいと思うのは人間の心理として当然です。
これは、どんな物を購入する際にもある程度は出てくる人間の深層心理だと思います。
ところが、不動産売買は相手ありきの取引です。
売り手側の売主さんはできるだけ高く売りたいというのが当然の心理です。
そのため買主さんが価格交渉をすると、まとまらないこともあります。
不動産会社は仲介の立場となるため、互いの考えを聞き調整していくことが役割です。
売主さんが価格交渉を受けることもあれば、全く受けることがないケースもあります。
特に2022年現在は東京の不動産価格も上昇中のため売手市場と言われ市況です。
その渦中では売主さんが価格交渉を受けつけないというケースも実際に多いと言われていますし、不動産会社としても感じています。
不動産売買の価格交渉は、売主が交渉金額に対して自身が売却してもよいと考える価格をお返事するという流れが一般的です。
例えば、5,100万円のマンションを買主さんが5,000万円で交渉したところ、売主さんが「5,050万円であればお売りします」といったような流れです。
そこで買主さんがあらためて、その売主さんの提示価格に対して購入するかどうかを回答することになります。
通常はこのやりとり一回で価格交渉が成立するかどうか決まります。
今回の章でもこのあたりについて、売主さん・買主さんの人間心理が描かれており、わかりやすい内容となっていました。
◆契約の誘引
契約の誘引というタイトルの章となり、ここでは手付金についての物語になっています。
手付金を不動産会社が買主さんへ貸し付け、売買契約が破談となってしまうという不動産会社としても想像したくない内容です。
そもそも、手付金を不動産会社が買主さんへ貸し付けるというのは宅地建物取引業法違反となります。
手付金を貸し付け、買主さんを契約へ誘引したということになり、これがこの章のタイトルとなっています。
不動産会社で売買を行っていると、買主さんが契約締結時の手付金がどうしても用意できないという場面に出くわすことはあります。
用意できない理由は様々です。
単純に手付金の存在を知らなかったというケースや物件価格以外にかかる諸費用もローンで考えている(オーバーローン)のケース、すぐに(契約日までに)現金として準備できないなどなど。
そういった場合、不動産会社としては手付金の額を買主さんが支払うことのできる金額で交渉することとなります。
跡えば、200万円のところを100万円や50万円などで交渉するということです。
売主さんが提示した手付金の額で了承して頂けた場合は無事に契約締結へ進むことができます。
ですが、売主さんが提示の手付金の額に了承頂けない場合や、そもそも買主さんが手付金をすぐに準備できないケースもあります。
その時、その場には買いたい買主さんとできれば契約を締結したい不動産会社の人間が存在します。
立場は違えど、契約したいというゴール(目的)は同じため、今回の物語のような不動産会社が手付金を貸し付けるという行為へ発展してしまうことになります。
手付金を貸し付け契約の誘引するという行為が禁止されている以上、やってはいけない行為です。
事実、今回の話のように契約後に解約となってしまっては、貸し付けた手付金を返金してもらうという以前の話になりかねません。
その精神的ダメージといったら、不動産会社としたら想像を絶します。
契約前の不動産会社の気持ちももちろんわかりますし、気に入った物件にようやく巡り合えた買主さんの気持ちもわかります。
今後も不動産会社として、あらためて本件については肝に銘じておこうと思いました。
◆1R(ワンルーム)マンション投資
1R(ワンルーム)マンション投資についての話です。
具体的な収益性を数字を示し細かく解説しているという話ではなく、どちらかと言えば1Rマンション投資についての不動産会社の営業スタンスにフォーカスした内容になっています。
1Rマンション投資の営業電話というのが携帯にかかってきたことがある方も多いと思います。
私にも時々かかってきます。
その際には、「私は不動産会社の人間です」というと、即「失礼しました」となり通話が終了するというやりとりを、これまでに幾度も繰り返してきました。
新築1Rマンション投資でも中古1Rマンション投資でも失敗例というのはインターネット上にもYouTubeなどでもごまんと出てきます。
不動産会社としてお伝えしたいのは、購入する前にせめてそういった先人の失敗例を知った方が良いということにつきます。
私も不動産会社で独立後に、ありがたいことに友人やご紹介のお客様より投資用の中古ワンルームマンションを探して欲しいと頼まれ数件ご契約させて頂きました。
友人やご紹介のお客様のため割高であったり、今後の賃貸運営が難しそうな物件をそもそも契約するわけがありません。
購入者からすれば、買うことが目的ではなく、買ってからがスタートいうのが不動産賃貸業です。
購入して頂いた物件については賃貸管理を任されているものもあり、関係性は続いていきますので責任を持って行っているというのは言うまでもありません。
不動産投資の世界でも、「利は元にあり」という言葉は何度も耳にするものです。
そのため、そもそも元である物件を割高で購入してしまえば本末転倒であり、目的達成どころではなくなります。
弊社でも1Rマンションを購入したこともありますので、1Rマンション投資にはメリットもあるというのは理解しています。
私自身も不動産投資関連の書籍も定期的に読む習慣があり、その中のジャンルとして1R投資も含まれています。
コロナによりさらに「FIRE」という概念に注目が集まったといわれており、投資ブームとも言われています。
その投資対象の中に不動産投資も含まれ、その中のジャンルに1Rマンション投資があり、結果、書籍も多く出版されています。
書籍ではメリットについても失敗についてももちろん学べます。
インターネットやYouTubeなどにも大量の1R投資関連の情報がすでに存在しており、容易に閲覧できる環境です。
こと1Rマンション投資の失敗はある程度型が決まっており情報収集は非常に容易です。
◆買取保証(前編)
買い先行のお客様の売却に買取保証をつける話です。
不動産会社としてはおなじみの流れとなります。
購入先の物件の引渡日は決まっているため、それまでになるべく高めの希望金額で売却できなかった場合、不動産会社が買い取ることで買い替え先に対しての資金確保を確実なものにするという図式です。
買取保証と呼ばれ、買い替えにあたってのリスクに保険をかけておくという方法です。
買取保証は言わば最終手段となりますので、より高めに売却することが買い替えをする方のメリットとなります。
ところが、買取をする不動産会社によっては安く買い取ることをメリットと考えてしまうケースもあります。
その場合は、買い替え当事者と不動産会社は互いに利益相反の関係となってしまいます。
今回の物語では果たして・・・
次回後半へ続く