不動産の購入をお手伝いする際に、不動産会社としてこのようなご質問を受けることがあります。
- 「司法書士さんの報酬の相場はどれくらいですか?」
- 「登記費用の相場はどれくらいですか?」
この二つは実際は別物なので、別々に回答する必要が出てきます。
◆不動産購入の司法書士報酬(手数料)の相場
不動産を購入する際には、通常、司法書士さんへ登記をお願いすることになり、その際に報酬をお支払いすることになります。
この報酬額についてですが、東京で不動産会社をしていての相場観はだいたい~15万円程だと思います。
私自身、お客様への購入前の諸費用を算出する際には、上限と考えている15万円にてご案内しておくことにしています(超えることが望ましくないため)。
この司法書士報酬と呼ばれるものには、謄本(全部事項証明書)の取得費や交通費、決済立会い費用(立会でない場合は出張費用)なども含みます。
◆司法書士の業務内容で報酬も変わる
この相場ですが、実際には、司法書士さんや司法書士事務所によっても変わりますし、業務内容によっても変わります。
業務内容としては、
- 抵当権設定費があるかどうか
- 土地の筆の合計数
- 決済の立合い場所はどこか
などにより異なってきます。
◇抵当権設定登記
ローンを組む際には、金融機関から融資をしてもらい、購入不動産に抵当権が設定されます。
この抵当権設定登記は司法書士の先生が銀行と打ち合わせをしたうえで手続きを行うことになりますので、報酬が発生します。
◇土地の合計筆数
土地には登記された地番が存在します(※住居表示ではない)。
今回購入する土地地番は合計いくつあるか(何筆あるか)により、所有権を移転する(自分の所有とする)登記の処理数が変わります。
1筆よりも5筆の方が司法書士さんの業務も増え、その分の報酬が発生することになります。
土地の筆数の確認については、謄本と公図で購入前にも確認することができます。
◇決済の立会い場所
東京の司法書士さんにお願いしている状況で、東京で決済をするのか九州で決済をするのかでも、移動交通費が変わるため、当然報酬額にも影響してきます。
コロナの影響でリモート決済が行われることも増えてきており、今後もこの流れはある程度続くと考えますが、売主・買主・仲介会社・司法書士で集まる立会い決済の方がまだまだ一般的です。
リモートで決済を行うケースで買主(購入者)として事前本人確認に司法書士さんへお越し頂く場合、その分の報酬額が発生します。
◆登記費用と司法書士報酬は別物
不動産会社をしていると、お客様へ登記費用(国税)の見積もり(司法書士報酬を含む)を提示した際に、「登記費用の相場はどれくらいなのか?」というニュアンスのご質問を受けることが非常に多いです。
先程申し上げたように、司法書士さんの報酬は東京では~15万円程ですが、登記費用は購入物件によります。
司法書士報酬と登記費用は別物となります。
登記の種類としては下記があります(ここでは詳細は省略します)。
- 土地・建物の所有権移転登記
- 抵当権設定登記
- 建物保存登記(新築物件)
- 建物表示登記(新築物件で通常、土地家屋調査士が担当)
物件によって登記費用が異なるのは、土地と建物の固定資産税評価額とローン借入額により定められた税率により算出されるためです。
そのため、登記費用は購入物件により上限は青天井と言えることになります。
購入前に事前に不動産会社へ目安を確認しておくことが必要です。
【別記】書籍『悩める売主を救う不動産エージェントという選択』を読みました
不動産業界では有名な著者の一人・長嶋修さんが会長を務めている不動産会社を題材とした話が中心の書籍です。
タイトルにもある不動産エージェントとういう言葉は最近では耳にするようになりました。いわゆる仲介業者です。
この本で印象に残ったのは、「転職エージェントに転職をお願いするように、今後は不動産エージェントへ不動産取引をお願いする」というニュアンスのくだりでした。
ざっくりと言えば、仲介業者よりも、より洗練された「不動産エージェント」の存在が必要になってくるということです。
欧米では不動産エージェントという制度が確立されているとよく耳にします。
私も以前、アメリカのエージェント資格をお持ちの方で日本に移住された方の自宅についての売買をお手伝いさせて頂いた経験があります。
その過程で、日本とアメリカの不動産売買の考え方や進め方はまるで異なるということを生の言葉で聞くことができました。
インターネットや書籍などでは度々出てくるものの、実際に本当に異なることを知りました。
欧米の方があらゆる点で不動産取引において先をいっているというくだりは、この書籍の中にも記述があります。
不動産会社として、「エージェントという概念」「仕事に対する向き合い方」「インスペクション制度」などの項目については改めて参考となる書籍でした。