漫画『正直不動産17巻』を読んで

漫画『正直不動産17巻』を読んで

漫画「正直不動産17巻」を読みました。

今回もそれぞれの章のテーマについて不動産会社目線で触れていこうと思います。

 

●但し書き道路物件(後編)

物語は前回の続きからはじまります。
前回:漫画『正直不動産16巻』を読んで

前半では但し書き道路の物件を仲介するにあたり、

  1. 建築審査会から但し書きの許可がおりるかどうか
  2. 住宅ローンにあたっての物件担保力不足

を懸念しつつ契約へ向かっていたところでした。

後半では、売買契約へ進み、無事に①②共にクリアをできた内容が書かれていました。

私自身も、43条但し書き道路、協定通路の物件の売買取引はだいぶ久しくしていない状態だったため、今回の内容は良い意味での刺激となりました。

また、今回の売買取引の過程の中で、主人公の後輩が人間として成長していく過程も書かれているところも印象に残りました。

 

●シロアリ物件

不動産とシロアリは切っても切り離せない関係と言えると思います。

今回の物語は、ある程度年数を経過した「木造戸建の売却」が題材となっています。

売却にあたりインスペクションを実施するのかどうか?

主人公は不動産会社の人間として、実施をおすすめし、売主としては実施したくないという葛藤が描かれています。

シロアリについては売買契約における契約不適合責任の項目となります。そのため、不動産会社の立ち位置からすると、引渡し後についても自ずと意識が向くものです。

引渡し後の売主と買主のリスク。このあたりについても触れられています。

物語の中では、最終的に売却前にインスペクションを実施した結果、シロアリはいませんでした。

ホームインスペクターが売主へ説明している内容は、不動産会社の人間にとっても非常に勉強となる内容でした。

欧米では当たり前などと言われるホームインスペクションも、日本の不動産取引ではまだまだ実施回数は少ないと言えます。

売主のインスペクションの実施が正解かどうかという明確な定義はありませんが、将来にわたり、日本の不動産の取引現場での捉え方も様々な視点から変化していくのだろうと感じる今日この頃です。

関連記事:分譲マンションにもシロアリが発生する可能性はあります

 

●がけ条例

擁壁にフォーカスした物語です。住宅街での隣地との擁壁が題材。

2mを超える高低差というのは東京で不動産の仕事をしていると、いわゆる一般的な住宅街でも存在するというのは把握しているものです。

中古住宅住宅の売買においては、既存の隣地擁壁の「経年劣化」や「現況」について、安全性・遵法性が保たれているのかどうかというのが、買主にとって重要であるということを再認識させてくれる内容となっていました。

高低差による擁壁の新規造成工事は、地域差はあれど、今後も日本中で行われていくもの。不動産業界の人間としても、注意すべきポイントについてはアップデートしていく必要があるのは間違いありません。

 

●環境的瑕疵

売買契約後に、近隣のいわゆる一般的に嫌悪施設と呼ばれるものを買主が知った場合、契約解除ともなりうるという話の内容です(賃貸契約でも同じことが言えるのですが)。

不動産会社からしても、決して遭遇したくないシチュエーションと言えますし、買主・借主としても同じことが言えます。

ここで出てきた内容として印象に残ったのは2つでした。

  1. 環境的瑕疵についての感じ方は人それぞれ
  2. 物件状況報告書の重要性

 

①環境的瑕疵についての感じ方は人それぞれ

いわゆる嫌悪施設と呼ばれる施設ですが、人により嫌悪と捉えるのかどうかは変わります。作中でも具体例を不動産営業マンが説明している内容はわかりやすいものとなります。

買主・借主の生い立ちや生活環境、職業などにもより変化が出てくるのは自然であると、不動産の仕事をしていると感じることは多々あります。

 

②物件状況報告書の重要性

不動産売買取引では「物件状況報告書」を売主が発行する形式をとります。その中に「周辺に影響を及ぼすと思われる施設等」という項目があるのは不動産業界の人間であれば把握しているものです。

あくまで売主の主観による報告(告知)となりますが、「可能性があるかもしれない」と思われる施設等は物件状況報告書に盛り込んでおいた方が良いということを不動産会社の立場からしても再認識しました。

「主観は十人十色である」ということを念頭に置いておくことは、後日のトラブル回避という観点からも重要であるのは間違いありません。

 

また、登坂不動産に以前在籍していたやり手営業マンが戻ってきました。今後の物語の楽しみも一つ増えました。

 

●オーナーチェンジ(前編)

オーナーチェンジの売買取引が行われた際には、その後速やかに賃貸人変更通知書なるものが借主に届くのが不動産取引の慣例となっています。今回もこの賃貸人変更通知書が届いたことにより、問題が発生します。

詳細内容は割愛しますが、物語前半で印象に残った点は、「借主は賃貸関係の書類は全て保管しておくべき」ということです。当たり前のことかもしれませんが、「いざという時には証拠になる」可能性もあり、今回の物語でも学ぶことができます。

弊社でもオーナーチェンジの物件を購入することがありますし、お客様が売主または買主としての売買仲介をすることもありますので、今回の内容も改めて頭の中に残しておこうと思いました。

次回後編へ続く

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